骨盤のパーツの一つ 『仙骨』の重要性
ここでは、一般の方にはあまり知られていない、でも身体にとって非常に大切な役割を果たしている「仙骨」という骨について触れたいと思います。
私自身も身体を改善していくには決して軽視できない重要な骨として施術に力をいれている部分ですので仙骨について詳しくご説明させていただこうと思います。
私たちの身体を支える支柱は、200個以上の骨からなる「骨格」です。
建物に土台があるように、骨格にも土台があります。
その土台とは骨盤であり、その中でもとても大切なパーツである、骨盤の中心にある仙骨(せんこつ)という骨が大事な役目を果たしています。
仙骨は、骨盤の中央にあり、脊柱(背骨)を下から支える土台となっている手の平大の逆三角形の骨です。
「仙人の骨」と書くように、古くから「不思議な力をもつ骨」と認識されてきました。
英語でも「セイクラム(sacrum)」と呼ばれており、これは「sacred bone」、
すなわち 「聖なる骨」の意味です。
名前通りにその重要性は大きく、人工骨で代用できない代表的な骨としても知られています。「仙骨を正さずして健康なし」といわれるほど、私たちにとって中心的な骨なのです。
直立した人間の身体は、仙骨の上に24個の背骨(脊椎)が積み木のように重なって「脊柱」を形成し、その上に平均5キロほどもある重い頭部を載せているタワーのような構造になっていて、人体の全体重を支える重心も仙骨にかかっています。つまり、仙骨は建物の土台、木でいえば根にあたり、背骨は建物の柱や木の幹にあたります。
しかも、仙骨は骨格の土台であるのみならず、実は中枢神経(脳・脊髄)を支え、末梢神経(自律神経)のはたらき・バランスを支える骨でもあるのです。
仙骨が支えている背骨(脊柱)は「バックボーン」といわれるように、からだの大黒柱であり屋台骨です。そしてこの脊柱は、脊髄という神経の束を内包している、からだの中枢ターミナル(からだ全体に脳からの指令を送っている)ですから、「背骨のゆがみ」は単なるゆがみでは済まない問題であることを認識していただきたいと思います。
土台(仙骨)が崩れているかぎり、柱(背骨)がまっすぐになることはありません。
加えて仙骨は、頭蓋骨の一部である後頭骨と連動していて、呼吸に合わせて1分間に16~17回の屈曲と伸展(開いたり閉じたり)を繰り返して脳脊髄液(C.S.F.)をポンプ作用で循環させています。
脳脊髄液(C.S.F.)とは、脳から分泌され脊髄、仙骨を経由し、神経細胞に栄養作用をもたらすといわれる重要な体液です。仙骨と後頭骨のポンプ作用は「第一次呼吸システム」と呼ばれ、生命維持に欠かすことのできない重要な生体活動です。仙骨はこれほどまでに、命にまで関わるような重要な役割を果たしています。
仙骨が「聖なる骨」と言われる由縁がこれでお分かりいただけましたでしょうか?
このように大切な仙骨には「仙腸関節」という関節があります。
ふつうの関節と比べ、ほとんど動かない関節といわれているのですが、仙骨とその左右にある腸骨という大きい骨が靭帯や筋肉で接合されてできています。
なんらかの原因でこの仙腸関節にズレ(分離)が生じて仙骨が正しく位置していない、仙腸関節がまった動かない、ロックされてしまったようなケースがとても多いのです。
それにより骨盤がゆがみ、さらに仙骨の上に24個積み木のように重なる背骨や、頭蓋骨までもゆがませてしまいます。
人体の重心がかかっている骨ですから、重心の位置もズレてアンバランスになります。骨格の土台である仙骨が正しく位置していないことで、全身のバランスが崩れてしまうのです。椎間板ヘルニア、脊椎側湾症、すべり症、脊柱管狭窄症、脊椎分離症なども、土台から背骨が崩れていれば、当然に起こりうる事態といえます。
さらに、背骨のゆがみは内包される脊髄のゆがみ(捻れ)でもあります。
脊髄が捻れて脳脊髄液(C.S.F.)の循環が滞ることで、自律神経のバランスが崩れてしまいます。自律神経のバランスが崩れることでからだ(細胞)の力が低下し、自己治癒力が衰えていきます。またそれは心のバランスにも影響を与えます。
さらには仙骨と靭帯でつながっている子宮、そして卵巣にも当然ストレスを生じさせますから、エストロゲンなど女性ホルモンのバランスにも影響し、生理不順、不正出血、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、不妊症といった婦人科疾患にもつながります。
全身バランスの源である仙骨から身体を立て直すことが、骨盤や背骨を根本から正すことになり、全身のバランスを取り戻させるために、たいへん重要かつ有効なのです。
私自身の経験から考えても、一般的な骨盤矯正や脊椎矯正はあっても、仙骨を重要な個所として手厚く施術しているところは、少ないように思います。